カップ一杯の幸せ

先日NHK+を見ていたら、笑わない数学スペシャル、ホッジ予想が登録されていました。これは総合5/6(火)午後11:00−午後11:44に放送された番組でしたが、席亭は見逃しています。
では早速、NHK+を視聴する事にします。

(1)サブタイトルには、人類究極の探求の物語、とあります。
(2)パンサー尾形による、モチーフ/音楽の説明
バッハの様に白いカツラを被り、左胸にはV−E+F=2のピンバッジを付けた尾形が登場します。この数式は(多面体の)オイラー数χを表しています。χ=V−E+Fです。ここでVは図形の頂点の数、Eは辺の数、Fは面の数です。
オイラー数にはこのχ以外の数(双曲線余割関数のテイラー展開における展開係数)も存在します。そして彼は、以下の事を主張します。
1)音楽というものにはその1つ1つにモチーフと呼ばれる短い旋律が存在。
2)その短いモチーフが音楽全体を言わば支配している。
3)ベートーベンの交響曲第6番「田園」のモチーフは、ここ!(2小節目)
4)この旋律がいろんな音程やテンポに姿を変えて、あちこちに登場する。
5)そうモチーフが音楽の魂、本質ともいえる存在。

実は音楽と数学は深い関係にあり、席亭の人類の歴史ゲームデザインでも後日、ピタゴラスコンマなどが登場します。
また某マンガ家の作品でも、この音楽用語が科学技術用語として援用されています。それだけ彼も、多分野に精通しているのでしょう。(笑)

(3)今日のテーマは、ホッジ予想
(4)ウイリアム・ホッジ(1903−1975)
番組ではイギリスの数学者、とあります。彼をWikiで調べると、
1)サー・ウィリアム・ヴァーランス・ダグラス・ホッジ(1903年6月17日−1975年7月7日)はイギリスの数学者、特に幾何学者である。
2)代数幾何学と微分幾何学の間の広範囲にわたる位相幾何学的関係(現在ホッジ理論と呼ばれ、より一般にケーラー多様体に関連する)に対するホッジの発見は、幾何学におけるその後の発展に大きな影響を及ぼした。
とあります。番組では、

1)(ホッジ予想は)1950年に提唱した図形の本質にせまる未解決問題(ミレニアム問題の1つ)、とあります。

(5)ホッジ予想の内容
非特異な射影的代数多様体のタイプ(p,p)のコホモロジーに対し、それをクラスとする代数的サイクルが存在するはずだ。
句読点は席亭が入れています。

定義に沢山の用語が使用されているので、素人にはチンプンカンプンです。Wikiで一つ一つ調べると、
1)非特異:用語が一般的過ぎて、検索に掛かりません。特異点(数学)の様な意味であるものと思われます。
  ちなみに特異性とは、適当な枠組みの下で考えている数学的対象が「定義されない」「よく振舞わない」などと言ったことを理由に除外されること、もの、とあります。
2)射影的代数多様体:射影多様体と代数多様体の説明ならば有ります。
3)コホモロジー:(参照不充分、情報源が依然不明確の表示)
4)クラス:集合論及びその応用としての数学におけるクラスまたは類は、集合の集まりで、それに属する全ての元が共通にもつ性質によって紛れなく定義されるものである、とあります。
5)代数的サイクル:(誤訳注意の表示)
ですから用語理解の時点で既に、数学的な専門書が必要とされそうです。ですから、こちらの方の努力は放棄します。(苦笑)

(6)某数学者の解説
この予想は数学者にとっても難問だそうで、
1)専門家の直感からさえも遠く離れた対象を扱うもので、それが本当は何を言っているのかについての意見の一致さえない。キース・デブリン『興奮する数学』より。
今日はこの「ホッジ予想とはどんな問題なのか?」に迫りたい。笑数史上、最高難度、by尾形、とあります。

(7)この、コホモロジーという概念が一番重要by尾形
このコホモロジーの、基礎の基礎とも言えるものから始める。
(8)アシスタント、浜ちゃんの出題
1)問題、図形を動かしたときの不変量を求めよ:答えは、角の角度や辺の長さなど
2)問題、図形を拡大・縮小したときの不変量を求めよ:答えは、角の角度など
3)問題、図形をグニャグニャに変形したときの不変量を求めよ(ちぎったり穴を開けたりせず連続的に変形、位相同型変換):ないよby尾形

(9)グニャグニャ変形の「不変量」とは?byナレーション
この不変量がコホモロジーへと繋がって行く。
1)レオンハルト・オイラー(1707−1783)

彼をWikiで調べると、
1))レオンハルト・オイラー(1707年4月15日−1783年9月18日)は、18世紀の数学者・天文学者(天体物理学者)である。
2))当時の数学界の中心的人物となり、19世紀へと続く厳密化・抽象化時代の礎を築いた。
3))右目を失明していたことから「数学のサイクロプス(単眼の巨人)とも呼ばれた。
4))さらに後には数学の研究に没頭し過ぎたあまり左目も失明したが、その後も亡くなるまで研究をやめることはなかった。
とあります。
番組ではオイラーからゴールドバッハへの手紙を紹介し、
2)驚いたことに私が知るかぎりあらゆる立体図形が持つこの性質にまだ誰も気づいていない!
3)図形を特徴づける意外な不変量
4)頂点の数−辺の数+面の数は、どんな立体図形でもグニャグニャ変形(位相同型変換)の前と後とで変わらない

(10)例題
1)先の四角錐台+直方体+四角錐台の場合
頂点の数16、辺の数28、面の数14、f=16−28+14=2
2)グニャグニャ変形した後の図形の場合
頂点の数5、辺の数8、面の数5、f=5−8+5=2
3)三角錐や直方体を変形しても、式の値は2に成る
4)オイラー数(χ)=頂点の数−辺の数+面の数
席亭も此処迄は知っていました。

5)ちなみにオイラー数はこんなシャボン玉のような頂点や辺がはっきりしない滑らかな図形でも、求める事ができる
6)その方法は、図形を小さな三角形に分割して、その頂点、辺、面の数を一生懸命数え上げて計算すると、はい出ました。χ=37−99+64=2
  頂点や辺がはっきりしないなめらかな図形でも、オイラー数は2
7)面の分割方法を変更したとしても、χ=78−205+129=2、と変わらない

ですが、此処には2つの(暗黙の)仮定が有りますよね?
1)微積分の様な、極限の概念を使用している
2)滑らかな図形を、三角形多面体に変形している(〜実際のカウントに使用しているのは、近似された三角形図形)
これらを証明なしに使用している訳です。現実的には1つの三角形を多数の三角形に分解したとしても、全体のオイラー数は変わらない事を示す必要が有ります。
席亭が此処で少し、この三角形の分解にチャレンジしてみる事にします。

(11)三角形の分解と、オイラー数のカウント
1)元の三角形(平面図形)の場合
  頂点の数3、辺の数3、面の数1から、オイラー数χ=3−3+1=1。2ではなく、1に成りました。
2)頂点から底辺に1本線を引いて、三角形を二つに分解した場合
  頂点から垂線を引けば、底辺に新たな点が生じます。ですから、頂点の数は一つ増えて、3+1=4。辺の数は底辺が二分割される事を考慮して、3+2=5。面の数も1つ増えて、1+1=2と成ります。
  オイラー数χ=4−5+2=1。確かにオイラー数は不変です。
3)辺から辺に1本線を引いて、三角形を二つに分解した場合
  この場合、1つの三角形と1つの四角形が形成されます。ですから点の数は3+2=5、線の数は3+3=6、面の数は1+1=2。χ=5−6+2=1。この場合もオイラー数は不変です。
つまり、三角形のオイラー数は図形の分割によっては変化しません。またオイラー数χの1や2という値は、図形の次元数と関係している事も推察出来ます。(笑)

(12)俺はオイラー数χが2に成らない図形も知っているbyナレーション
1)例えばこんな感じの、真ん中に穴が開いた(ペンタゴンの様な)立体図形のオイラー数χを調べてみると、
  χ=20−40+20=0
2)ドーナツみたいな滑らかな図形でも小さな三角形に分割して確かめてみると、
  χ=112−224+112=0
3)穴が1つ開いた立体ならば、χは必ず0。穴が2つ開いた立体ならば、χは必ず−2。穴がg個開いている立体ならば、χは必ず2−2g。

4)オイラー数は言わば、図形の魂。オイラー数はそれぞれの図形を特徴付け、支配している本質だ。by尾形
席亭はそうは思いません。オイラー数とは例えばノルムの様な、必然的に出現するマクロ的な性格だと思います。後にこの、オイラー数の仕組みを考えて見る事にします。
5)オイラー数は地味でつまらない。第一、なんの役に立つの?、と思っているのじゃないか?by尾形
6)オイラー数を比べれば似たもの同士か判断できるby尾形

(13)浜ちゃんの出題その2
1)問題、この立体(穴にあいた穴を通る穴)はどれと似たもの同士か?
  パンサー尾形はギブアップします。
2)ヒント:立体を3つのパーツに分けて、それぞれで頂点、辺、面の数を数える
  1つ目の図形は上、下、右側面、左側面に穴の開いた図形です。2つ目の図形は中央右から左に開けられた、途中で分割合流する穴です。3つ目の図形は上下に貫通する穴です。これらの頂点、辺、面を数えます。
  1つ目の頂点24、辺44、面18、2つ目の頂点24、辺48、面22、3つ目の頂点0、辺4、面4、合計は頂点48、辺96、面44、χ=48−96+44=−4、と求まります。
3つの穴のあいたドーナツ(χ=−4)と同じ魂を持っている。グニャグニャに変形したら、3つの穴のあいたドーナツになる。by尾形

(14)ナレーターの説明
1)実際に穴にあいた穴を通る穴をグニャグニャ変形(位相同型変換)して、3つ穴ドーナツに成る事を確認。本質は同じ。byナレーター
ですが、何を本質と呼ぶかは、人によって違いますよね?(苦笑)

2)上下左右に穴が開いており、それらが中央で連結されている穴を持つ直方体:これもχ=32−64+28=−4、となる。
3)実際に位相同型変換をして、3つ穴ドーナツに成る事を確認。
4)一瞬、文章では表現出来なそうな複雑な図形:χ=6090−18252+12156=−6となり、これは4つ穴ドーナツ。

(15)パンサー尾形の登場:一旦此処で、気分を変えてみましょうか?
1)数学者たちは歴史の中で、どんな図形を研究してきたのか?
2)放物線、円、楕円
3)楕円体、円柱、円錐
4)意外と単純な図形ばかり研究して来た、ある数学者が登場する迄は。

(16)ルネ・デカルト(1596−1650)
皆様も御存じのあのデカルトをわざわざWikiで調べると、
1)ルネ・デカルト(1596年3月31日−1650年2月11日)は、フランス生まれの哲学者、数学者。合理主義哲学の祖であり、近世哲学の祖として知られる。
2)ラテン語名はレナトゥス・カルテシウスである。
3)デカルト座標、デカルト積のようにデカルトの名がついたものにカルテジアンという表現が用いられる。
4)デカルト主義者もカルテジアンと呼ばれる。
席亭はこれを長い事、カーテシアンと覚えていました。(苦笑)
5)考える主体としての自己(精神)とその存在を定式化した「我思う、ゆえに我あり」は哲学史上で最も有名な命題の一つである。
席亭はこの言葉はギリシアやローマ辺りの古い言葉であると思っていたのですが、デカルトが唱えたとするならこれは明らかに近世の言葉ですよね?
ちなみに近世の定義は、西洋史ではルネッサンス(〜14世紀後半)から市民革命・産業革命(〜18世紀後半)の時代まで、だそうです。
また「人間は考える葦である」の方は、ブレーズ・パスカル(1623−1662)です。ソクラテスの神のみぞ知る、ピタゴラスの万物は数である、と比べると、人類も多少は進歩しているのでしょう。(笑)

(17)パンサー尾形の説明の続き
1)デカルトはさまざまな図形が座標を用いる事で、数式で書ける事に気付いた。
円錐:x^2+y^2=z^2
楕円体:x^2/5+y^2/3+z^2/2=1
円柱:x^2+y^2=1

2)球面:x^2+y^2+z^2=1
3)(無限個有る)数式の解を、幾つか3次元空間の点(x,y,z)で表示。
4)その結果、球面が完成する。
5)そして図形は数式で表せるというこの発見が、絵に描く事も出来ない程のムチャクチャ複雑怪奇な図形の本質に数学者たちが迫って行くきっかけとなった。

(18)ナレーション
1)2つの二次元図形と2つの三次元図形→4つの式
二次元図形は放物線と楕円、三次元図形は楕円体と円錐、4つの式とは、
y=x^2:これは放物線
6x^2+2xy+3y^2=1:二次元図形ですが、分かりません。残った楕円でしょうか? この形を楕円の標準形にするには、xyの係数を0にする様にX=ax+byと線形変換をすれば良いでしょう。
x^2+y^2=z^2:これは円錐
x^2/5+y^2/3+z^2/2=1:これは楕円体

2)数学者達はやがて、この逆の関係も成り立つだろうと考えます。
3)つまり、様々な数式はそれが数学者達が適当に書いた数式だったとしても、何らかの図形を表しているに違いないと考える様に成った。
4)4つの式
x^3−30xy+y^3=0
0.1x^8−x^6y+x^4y^4+y^2=18
6x^4−21x^3+6x^2y^2+19x^2−11xy^2+4y^4−3y^2=0
(x^2+y^2)^4=x^2y^2
逃げる訳では有りませんが、本体はこの後登場するのでしょう。

5)x^3−30xy+y^3=0:これは2番目の数式です。解説では、デカルトの正葉線、とあります。ここでWikiで調べてみると、
1))1638年、ルネ・デカルトによって提案・研究された。
2))デカルトの正葉線は微積文学の発展におけるデカルトとフェルマーとの出来事で有名になった。
3))デカルトは、フェルマーが接線を発見する方法を発見したと聞いて、フェルマーに曲線の任意の点上における接線を引く問題を出した。
4))フェルマーはデカルトが解決できなかった方法を簡単に解決した。
5))微積分学の発展に伴い、現在は陰関数の微分によって曲線の接線の傾きを求められることが知られている。
とあります。

6)座標を使えば、数式の数だけ新たな図形を作り出す事が出来るようになった。
4つの曲線とその名前が、示されています。
デカルトの正葉線:同上
レムニスケート:(x^2+y^2)^2=2(x^2−y^2)
カッシーニの卵形線:(x^2+y^2)^2−20000(y^2−x^2)−8243216=0
&型曲線:6x^4−21x^3+6x^2y^2+19x^2−11xy^2+4y^4−3y^2=0
最後の曲線などは、お手上げですよね?(苦笑)

7)元の数式が複雑であればあるほど、こんな風に入り組んだ図形に成っている可能性がある。
エネパー曲面:64z^9−128z^7+64z^5−702x^2y^2z^3−18x^2y^2z+144(y^2z^6−x^2z^6)+162(y^4z^2−x^4z^2)+27(y^6−x^6)+9(x^4z+y^4z)
        +48(x^2z^3+y^2z^3)−432(x^2z^5+y^2z^5)+81(x^4y^2−x^2y^4)+240(y^2z^4−x^2z^4)−135(x^4z^3+y^4z^3)=0
エネパー曲面はWikiではエンネパー曲面で解説されており、自己交差性を持つ、とあります。流石にこれでは、席亭もお手上げです。以下、数式は省略します。
チュムトフ曲面:こちらの方の頁は、Wikiには有りません。

8)文字が4種類含まれているこの数式:x^2+y^2+z^2+w^2=1、が表しているのは、実は4次元の世界にある図形。
番組ではグニャグニャの図形が示されていましたが、これは四次元球です。席亭は、絵に表現されている様な特異点は一切無い、と思います。(笑)
番組では「描画不可能」とありましたが、数学者の中にはこの様な図形をイメージ出来る学者も居る様です。(笑)
9)こっちの数式には文字が10種類出て来ますから、10次元の世界にある図形。

10)ところが19世紀に入ると、数学者達は頭に思い浮かべる事さえ不可能な複雑怪奇な図形の性質を調べたい、という誘惑に駆られる様になった。
11)見えないものを相手にする、現代数学への大きな一歩でもありました。
タイトルの左右には3名+3名、合計6名の数学者の肖像が描かれています。きっとこの後登場するのでしょう。(笑)
12)数学者達は、せめてその図形を似たもの同士に分類できないか、と考える様になった。
13)その時数学者達が頼ったのが、そう図形の魂とも言えるものとして、仲間同士かどうかの判定に役立っていた、あのオイラー数でした。
14)メチャクチャ苦労をしてオイラー数を求めてみた所、それが役に立たないという残念な事実が判明します。
15)同じオイラー数(χ=0)を持つ図形なのに、どう変形しても同じ形にならない場合が沢山有る事が分かった。
席亭の考えはこうです。元々立体図形(d=3)を調べる為に、オイラー数には頂点(d=0)、辺(d=1)、面(d=2)の数しか変数は有りませんでした。ですから、次元が上がれば(d>3)、成立しなく成る訳です。
代替する数式が必要と成りますが、その前に「オイラー数を構成する各々の変数の意味」を吟味、理解しておく必要が有ります。

(19)尾形の登場
オイラー数の代わりにコモホロジーって奴が、図形の本当の魂、本質なんじゃないかとして、歴史に登場して来る。

(20)ナレーション
1)最初の手がかりを掴んだのは、ポアンカレ予想で有名な、アンリ・ポアンカレ(1854−1912)。
このポアンカレをWikiで調べると、
1))ジュール=アンリ・ポアンカレ(1854年4月29日−1912年7月17日)は、フランスの数学者、理論物理学者、科学哲学者。数学、数理物理学、天体力学などの分野で重要な基本原理を確立し、多大な功績を残した。
2))フランス第三共和制大統領・レイモン・ポアンカレは従兄弟。ナンシー生まれ。
3))位相幾何学の分野では、トポロジー概念の発見や、ポアンカレ予想など、重要な活躍をしている。また、フックス関数(現在で言うところのモジュラー形式)と非ユークリッド幾何学との結びつきについての数学的な発見をした際に、
   その過程の詳しい叙述を残して、その後の数学研究の心理的側面の研究にも影響を与えた。
4))その他、ヒルベルトの形式主義に対する批判をして、初期の直感主義の立場を表明した。
5))電子計算機がない時代にカオス的挙動について言及した点でも特筆され、後に「バタフライ効果」と呼ばれる予測不能性などが著書の中で触れられている。

2)ポアンカレが考えたのは、図形の上に描くことができる、いわば“消えない点”、“消えない輪”、“消えない面”の数でした。
3)ここでは分かり易くするため、単純なドーナツ型を例に、話を進める。
ドーナツ型を表す式は、
x^4+y^4+z^4+2(x^2y^2+y^2z^2+z^2x^2)−20(x^2+y^2)+16z^2+64=0
4)“消えない”点とは?:移動する事で一致する点は、同じと見做す。→ドーナツ面上の点は全て一点に集中する。∴n=1。
5)“消えない”輪とは?:いろんな輪っかを書く。移動すると一致してしまう輪は消す。輪っかは3つ残る。一つはドーナツ型のリング、一つはドーナツ断面の小さな輪、もう一つは曲面上の閉曲線。3番目は微小化で消える。∴n=2。
6)ドーナツに絡みついた輪は、変形によって大きな輪+小さな輪*2となる。
7)絡みついた輪っかはどんなものでも、2種類の消えない輪のいわば足し算で表せる。
8)“消えない面”とは?:ドーナツの場合は1つだけ。
9)1895年、ポアンカレはこうして求められる“消えない”点(0次元サイクル)、“消えない”輪(1次元サイクル)、“消えない”面(2次元サイクル)の個数が図形をグニャグニャ変形しても変わらない不変量、言わば図形の新たな魂と言えそうだ。
10)そして、それらをベッチ数と名付けた。b0=1、b1=2、b2=1。
11)実は、オイラー数とベッチ数との間には、こんな関係がある。
  χ=b0−b1+b2−・・・
12)言ってみれば、オイラー数を複数の数を使ってより詳しく表現したものがベッチ数。
13)オイラー数χが0の、四次元球とより複雑な図形のベッチ数は(1,0,0,1)と(1,3,3,1)。両者は違う。
14)しかし同じベッチ数(1,0,0,1)を持つのに、どう変形しても同じ形にならない図形が残念ながらまだまだ有った。
15)ベッチ数を超える、図形にとってのより根源的な不変量を発見し、世界を驚かせた人物がいました。

(21)ドイツの女性数学者、エミー・ネーター(1882−1935)
Wikiで彼女を調べると、
1)アマーリエ・エミー・ネーター(1882年3月23日−1935年4月14日)は、ドイツ生まれの数学者。ユダヤ系ドイツ人。
2)抽象代数学において環、体、多元環の理論の発展に寄与し、物理学において対称性と保存則の関係を説明するネーターの定理を示した。
番組では、
3)ネーターは博士号を取得した後も7年以上にわたって、給料なしで講義をしなければならなかった。
4)1925年、そんなネーターが気付いたのが、ポアンカレの考え方の中に出て来たの輪っか同士の足し算の背後にある、数学的な深い意味、いわばこう考えた。
5)「消えない輪」の個数として登場したベッチ数、しかしその輪は単なる輪っかではなく、足し算という数学的構造を持っている。
6)ネーターはベッチ数の背後には、数学の言葉で群と呼ばれる特殊な概念が隠れている事を見抜いた。
まあ足し算が出来るのなら、加群の様な構造が有るのでしょう。
7)これこそがオイラー数やベッチ数に代わる、図形のより根源的な不変量、コホモロジー(群)H^nの発見でした。
席亭にもおぼろげながら、コホモロジーのアウトラインが見えて来ました。

(22)ピエール・ドリーニュ博士(プリンストン高等研究所)
1)コホモロジー研究の第一人者であり、数論幾何という最先端分野の世界的権威、ピエール・ドリーニュ博士。
2)ネーターの発見は実に図形の魂、本質を捉えたものとして世界の数学者達に衝撃を与えた。byナレーター
どういう訳か?、幾何には女性の貢献が多い様です。あるいは直感的なのが良いのでしょうか?
3)ネーターが気付いたことはとてもシンプルでした。しかしそれは図形を理解するための強力な武器となったのです。
  コホモロジーを調べると、単なる数であるベッチ数よりも図形の構造がよく分かるのです。図形のとらえ方は根本的に変わりました。
4)でもですよ、実は此処で、意外な事が起きたのです。by尾形
5)コホモロジーには、いくつもの種類が見つかった。by尾形
6)同じ図形にたくさんの魂がある!?byナレーション

(23)ナレーション
1)1925年、ネーターが図形の本質であるコホモロジーを発見して以降、何故か次々と新たなコホモロジーが発見されて行きました。
1925年/エミー・ネーター、H^n(ベッチ)コホモロジー、1931年/ジョルジュ・ド・ラーム(1903−1990)、H^n(Hは書体がイタリック?)ド・ラームコホモロジー、
1953年/アンリ・カルタン(1904−2008)、H^n(Hの横棒が左に突き出ている)層コホモロジー

2)1960年代以降、何と図形以外の分野にもその本質とも言えるコホモロジーが沢山存在するという意外な事実が分かってしまった。
左上から順に列挙すると、ガロアコホモロジー、ドリーニュ・ベイリンソンC、局所C、l進エタールC、p進エタールC、リジッドC、L^2C、リー代数C、プリズマティックC、クリスタリンC、
それと、中央に円で囲まれた4つのコホモロジー、チェックC、層C、ベッチC、ド・ラームCが置かれています。
それだけ、コホモロジー(C)という概念が普遍的、リッチなのでしょう。

3)更にそのコホモロジーを用いると、これまで数学者を悩ませて来た数々の未解決問題が解けてしまうという、不思議な事まで判明した。
画面には、フェルマーの最終定理:x^n+y^n=z^n、nが3以上の場合、この式を満たすx、y、zは存在しない(x、y、zは自然数)、
ヴェイユ予想:Z(X,t)=exp(煤X(Fpn)/n*t^n)、合同ゼータ関数、
モーデル予想:種数2以上の代数多様体のQ有理点は有限個、の3つの問題が表示されています。

4)コホモロジーがたくさん発見され、難問解決に役立つ背景とは?

(24)アレクサンダー・グロタンディーク(1928−2014)
1)1968年、一人の数学者がさまざまなコホモロジーは実は数学の“神髄”と呼べる存在と繋がっているのではないかという、壮大な仮説を唱えた。
2)数学の世界で数多く発見されているコホモロジーには実はその大元とも言える存在があって、それぞれのコホモロジーはその大元の側面を見ているだけに過ぎないのではないか。
3)壮大な交響曲にもモチーフと呼ばれる大元となる旋律があり、そのモチーフが音程やテンポを変えながら手を変え品を変え登場する事で、その音楽を特徴づけ支配している様に、
  数学の世界にもまた、数学を特徴づけ支配する、いわば神髄が存在していて、様々なコホモロジーとして姿を現しているのではないか?、と言うのです。
4)グロタンディークは音楽に倣い、数学の神髄をモチーフと名付けた。
5)その存在を証明する事が、数学者に課せられた究極の使命だと考えた。
まあ、席亭はそうは思いませんが。(苦笑)

6)さまざまのコホモロジー(理論)は同一の基礎のモチーフが異なるテンポやキー調べを持つ事で存在するということになるでしょう。
  これが音楽的隠喩という専門的でない言語で表現された大胆なアイデアの意味なのです。アレクサンダー・グロタンディーク「収穫と蒔いた種と」より

(25)ホッジ予想とは何か?by尾形
1)モチーフと呼ばれる、数学の神髄は本当に存在するのか? その証明の為にグロタンディークが考えた1つの作戦がある。byナレーター
2)モチーフの様々な側面として数学の世界に現れるコホモロジー。グロタンディークはそれぞれのコホモロジーにはその大元であるモチーフの性質を受継ぐ重要部分(代数的サイクル)があるに違いないと考えた。
3)もしすべてのコホモロジーの重要部分を見付ける事が出来れば、それを入口としてモチーフの存在が確かめられる筈だ。
4)しかし、ここにはそもそもの問題がありました。モチーフの入口となる重要部分をどうやって見付ければいいのか、そもそも重要部分は本当に存在するのかという根本的な問題。
5)実はもしホッジ予想が正しい事が証明出来れば、一部のコホモロジーの重要部分(代数的サイクル)が確定し、モチーフの証明への大きな足掛かりになる。
ここで漸く、モチーフとホッジ予想とがリンクされました。

(26)ドリーニュ博士の談話
1)モチーフは「理論」というよりも数学についての「哲学」と言っていいかもしれません。数学では異なる視点から見ているのになぜか同じモノがみつかったり、同じ答えにたどりつくということがよくあります。
  モチーフはその理由を教えてくれるのです
2)ホッジ予想は私にとってモチーフへの「頼みの綱」です。ただ今は証明どころか正しいのかまちがっているのかの手がかりさえ見つかりません。いろいろ試しましたが今の私にはどうやら打つ手がありません。
3)(質問)いらだたしくはありませんか?
4)いいや、うまくいかないなら別の作戦を立てるまでですよ。モチーフが見つかって数学についてのもっと深いものを見せてくれることが楽しみです。

(27)数学とは人類究極の探求の物語
此処で尾形は自身のモチーフ、サンキュー(39)を紹介し、彼の経歴と家族を紹介してサンキューの決めポーズで終了します。

(28)席亭のオマケ
此処でオイラー数の仕組みや、代数的サイクルについて考えて見る事にします。
1)オイラー数
オイラー数の変数は、頂点の数、辺の数、面の数の3つです。では頂点とは何でしょうか?
1))頂点
点は図形の何処にでも有りますから、個数は∞です。ですから、頂点だけを数えるのです。では頂点とは何でしょうか?
よく見る図形では、辺が集まる場所、と言えそうです。これは、当たらずとも遠からずでしょう。(笑)次元数は0次元です。

2))辺
ここでの辺は、頂点と頂点とを結ぶもの、でしょう。ここでこの2点をP1、P2とすると、辺を構成する変数はこのP1とP2だけでは有りません。
ユークリッド幾何学では、2点間を結ぶ直線は1本だけですから、辺Lの要素はL=(P1、P2、1)などと書けるのでしょう。点P1と点P2との間の要素は、1種類な訳です。
ですが、2点を結ぶのは何も直線だけではなく、曲線でも良い訳ですよね?これをL=(P1、P2、l)などと書きます。lの次元数は不明で、2次元平面や3次元空間では、変わって来ますよね? 席亭にも分かりません。(苦笑)

3))面
同様にして、面Sは頂点Pや辺Lで決まります。3つの点Pで三角形は定義されますよね? ですからS=(P1、P2、P3、s)などと書きます。ここでsは、ユークリッド幾何学の場合は1です。
しかし三角形は辺Lでも定義出来ますよね? S=(L1、L2、L3、s)などです。ですから面Sには、少なくとも2種類の表現が有る訳です。
ですから面Sを前提としたならば、点Pと辺Lとの間には有る種の関係が存在する事が予想されますよね?
そしてこれが、オイラー数が生じる原因なのです。

2)代数的サイクル
席亭は数学の教科書を読んでいませんから、厳密な定義は知りません。しかし、それを予想する事は出来ます。
自然数Nや整数Zは豊穣なので、この概念を拡張する事も有用でしょう。コホモロジーは群(〜加群)を成すと有りましたから、これが代数的という言葉の由来なのでしょう。
また群の要素を数ではなく、別の要素や操作、演算子などに代替する事も可能です。中には集合を要素とする集合も有りますから。
席亭もサイクルの定義は知りませんが、ベッチ数の所で出て来ましたから、これも有る程度推測する事が出来ます。閉曲線という所がミソなのでしょう。立体図形も局所的ですから。(笑)

<完>

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