韻文と詩歌

Civでは前述した様に「演劇と詩」でした。韻文は文章ですので、11)手足とその力学的な出力に関係しています。また口ずさむ事も有るでしょうから、6)耳と音、10)口と声も関係しています。
韻文では、韻を踏む事が大切だからです。耳障りが良いのも、韻文の特徴ですよね? ですからこれは、かなり音楽に近い要素、作品、芸術です。
さて、Wikiで韻文と詩歌を調べると、「韻文」、「韻文詩」、「詩」ページなどがヒットします。まずは「韻文」ページから。

1)韻文(いんぶん)とは、聴覚に一定の定まった形象を感覚させる一定の規則(韻律)に則って書き表された文章。散文の反意語。多く詩において用いられる。
2)一定のリズムを持ち、暗誦されるのに適しているため、古代から神話や歴史の叙述に用いられてきた。
3)俳句、和歌、漢詩、連歌、連句、四行詩、脚韻詩などの韻文詩なども韻文に含まれる。

4)形成要素:
5)韻律の要素は言語、文化的背景、あるいは韻文の形式により異なる。日本語やフランス語では時間的単位であるモーラ(拍)もしくは音節が一定数反復されて韻文を構成する。
6)さらに多くの言語では、音節の長短(古典ギリシャ語、ラテン語)、アクセント(英語、ドイツ語)、声調(中国語の平仄)などに関して一定のパターンが定められている。
7)韻文を構成するもう一つの要素が押韻である。
8)日本語の韻文では押韻はほとんど意味を持たないが、西欧や中国をはじめとして世界の多くの韻文では、押韻、特に脚韻が重要な要素であって、韻律との組み合わせによって韻文を構成する。
9)古英語などゲルマン語の古い韻文では、頭韻も重視された。
確かに、頭韻と脚韻では、印象が変わります。

10)中国の韻文:
11)中国文学における韻文とは押韻を伴うことを特徴とする文体のことでもある。
12)これは散文や駢文に対立する。代表的な韻文である詩・詞・曲以外にも辞賦・頌・賛・箴・銘・哀・誄などが挙げられる。
次は「韻文詩」ページです。

1)韻文詩(いんぶんし)とは、詩用語。脚韻詩、頭韻詩などがある。
2)散文詩とは対にある。
3)もともと韻文とは、詩と同義であり、散文と対立する漢文用語。一定の韻に属した語を並べることで、声調を整えた文が、韻文。中国、インド、欧米において発達した。
4)しかし、しだいに押韻の要素を持たない詩的な文が、散文詩として、19世紀末から殊に急速な発展を遂げる。

5)日本:
6)日本語においては、散文に対し、五七調を中心とした律文が発達し、押韻表現は、対句を含めても、けっして広まっているとは言えない。
7)古来から日本語の韻文性を研究する試みはあるが、実作としての日本語の詩歌で、押韻表現が意識されることは少なかった。
押韻は、ダジャレなどの方が多そうです。余り重きを置かれなかったのかも・・・。貴族が低俗であると見なし?、採用しなかったのかも。
8)明治以後、欧米の詩が、押韻表現を無視した、行分け文として翻訳紹介され、その影響から日本語の新体詩が登場し、近代詩が確立すると(1901年の岩野泡鳴詩集『露じも』、1907年の泡鳴『新体詩作法』)、
  日本語詩人にもしだいに押韻への意欲が芽生えてくる。
9)特に、太平洋戦争下に作品朗読発表会の名称で始まったマチネ・ポエティク運動における押韻定型詩は、押韻とソネット形式による叙情詩の革命を志す、福永武彦、中村真一郎、加藤周一、窪田啓作ら10人の若者による大胆な実験だった。
10)昭和後期以後にも、飯島耕一らによる押韻詩への試みは続くが、現代詩の世界では行分け詩より散文詩がもてはやされてゆく。
席亭も韻文の方が耳障りは良いですが、徒に言葉を整えなくとも、飾らなくとも、とは思います。伝えたい事は、修飾では無い筈ですから。
次は「詩」ページです。

1)詩(し、うた、英:poetry, poem; 仏:po〇(e+')sie, po〇(e+'の反対)me; 独:Gedicht)は、言語の表面的な意味だけではなく美学的・喚起的な性質を用いて表現される文学の一形式である。
2)多くの地域で非常に古い起源を持つ。多くは韻文で一定の形式とリズムを持つが、例外もある。
3)一定の形式に凝縮して言葉を収め、また効果的に感動・叙情・ビジョンなどを表すための表現上の工夫(修辞技法)が多く見られる。
4)詩は独立したものとして書かれる場合も、詩劇・聖歌・歌詞・散文詩などに見られるように他の芸術表現と結び付いた形で書かれる場合もある。

5)英語のpoetryやpoem、フランス語のpo〇sieやpo〇meなどの語は、「作ること」を意味するギリシア語〇(poiesis)に由来し、技術を以て作り出された言葉を意味した。
6)漢字の「詩」は思いや記憶を言葉にしたもので、特に西周のころの古代中国の歌謡を編纂した詩編を指した(のちに『詩経』と称される。漢詩も参照)。
7)日本では明治になるまでは「詩」といえば漢詩を指し、「歌」は日本古来の歌謡から発したものを指した。
8)文学の一形式として「詩」の語を使うようになったのは、西洋文学の影響から作られた『新体詩抄』などを起源とする。

9)印刷技術が普及した後は詩の多くは活字で提供され「読まれる」ようになったが、詩は文字の発明以前から存在したとも言われ、韻文を朗唱、あるいは節を付けて歌うことが普通であった。
10)漢詩に節を付けて詠じるものは詩吟と言う。幕末以降の日本では一時期流行し、剣舞を伴う事もあった。
11)現代では、詩を朗読することを特にポエトリー・リーディングと呼ぶことがある。作者本人による朗読会や、音楽の演奏とコラボレーションを行うなどの試みもある。

12)概説:
13)詩および詩を巡る議論には長い歴史がある。
14)アリストテレスの『詩学』のような詩を定義する初期の試みでは、修辞・演劇・歌・喜劇などにおける話法の用い方に焦点を合わせていた。
15)後世の試みでは、反復、詩型、韻といった要素に重点が置かれ、詩を散文から区別する美学が強調された。
16)20世紀中葉以降では、詩はより緩やかに言語を用いた根源的な創造活動として定義されることもある。

17)詩では特有の形式や決まり事を用いることで言葉に別の意味を持たせたり感情的・官能的な反応を引き起こしたりすることが多い。
18)類韻、頭韻、オノマトペ、韻律といった道具が音楽的もしくは呪術的な効果を生み出すために用いられる場合もある。
19)両義性、象徴、イロニーやその他の詩語による文体的要素はしばしば詩作品に複数の解釈を可能にする。
20)同様に、隠喩・直喩・換喩はそれがなければ全く別々であったイメージを共鳴させ、意味を重層化させ、それまで知覚されなかった繋がりを形成する。
21)同種の共鳴は韻律や脚韻のパターンによって個々の詩行の間にも存在し得る。

22)詩の諸形式の中には詩人が書く言語の特徴に呼応した特定の文化やジャンルに固有のものもある。
23)ダンテ、ゲーテ、ミツキェヴィチ、ルーミーのような詩人で詩をイメージすることに慣れた読者は、詩を韻を踏んだ詩行と規則的な韻律で書かれたものと考えるかもしれないが、
   聖書の詩のようにリズムと音調を得るために別のアプローチを取る伝統もある。
24)現代の詩の多くは詩の伝統に対してある程度は批評的であり、音調の原則そのもの(やその他のもの)と戯れ、試し、場合によっては敢えて韻を踏まなかったり韻律を定めなかったりもする。
25)今日のグローバル化した世界では、詩人たちはしばしば様式、技法、形式などをさまざまな文化や言語から借用している。

26)詩の美や力や効果は様式や技法や形式だけによるものではない。
27)偉大な詩は、まさにその言葉によって聴衆や読者に思考と力強い感情を喚び起こすことで他から抜きん出る。
28)たとえばハンガリーのヨージェフ・アティッラのような詩人たちは、センテンスに結合された言葉によって言葉自体の意味の総和よりも大きな意味に到達する非凡な詩を書いている。
29)そうした言葉の中には日常会話で使われる諺になったものもある。
30)時代や文化が変われば言葉の意味も変化するので、詩の当初の美や力を味わうのは難しい。
席亭も、俳句などの(短文)芸術は「技巧の多少、優劣などではなく、読者との共感に在る」と思っています。ですから、時代が変わるとその評価も変わる可能性が有ります。(〜旬)

31)歴史:
32)芸術の一形式としての詩は文字の読み書きよりも先に存在したとも考えられる。
33)古代インドの『ヴェーダ』(紀元前1700−1200年)やザラスシュトラの『ガーサー』(紀元前1200−900年)から『オデュッセイア』(紀元前800−675年)に至る古代の作品の多くは、
   前史時代や古代の社会において記憶と口頭による伝達を補助するために詩の形で作られたものと思われる。
34)詩は文字を持つ文明の大半において最初期の記録の中に出現しており、初期のモノリス・ルーン石碑・石碑などから詩の断片が発見されている。
詩は音読を前提としているので、発声情報が欠落するとその味わいも変わると思います。
35)現存する最古の詩は紀元前三千年紀のシュメール(メソポタミア、現イラク)の『ギルガメシュ叙事詩』であり、粘土板や後にはパピルスに楔形文字で書かれていた。
36)その他の古代の叙事詩にはギリシア語の『イーリアス』と『オデュッセイア』、アヴェスター語の『ガーサー』と『ヤスナ』、古代ローマの民族叙事詩、ウェルギリウスの『アエネーイス』、インドの『ラーマーヤナ』と『マハーバーラタ』などがある。
37)詩を詩として成立させている形式上の特徴は何か、良い詩と悪い詩との分かれ目は何かを決定しようという古代の思索家たちの努力は「詩学」――詩の美学的研究を生み出した。
38)古代社会の中には、中国の儒教の五経の1つである『詩経』に見られるように審美的のみならず儀式的にも重要な詩的作品の規範を発達させたものもあった。
39)近年でも、思索家たちはチョーサーの『カンタベリー物語』から松尾芭蕉の『おくのほそ道』までの形式上の差異や、タナハの宗教詩からロマンチック・ラブ詩やラップに至るまでのコンテクスト上の差異を包括できる定義を求めて苦闘している。

40)コンテクストは詩学にとって、また詩のジャンルや形式の発達にとって決定的に重要である。
コンテクストとは、文脈の事です。
41)『ギルガメシュ叙事詩』やフェルドウスィーの『シャー・ナーメ』のような歴史的な出来事を叙事詩として記録した詩は必然的に長く物語的になる一方で、典礼のために用いられる詩(聖歌、詩篇、スーラ、ハディース)は
   霊感を与えるような調子を持ち、またエレジーや悲劇は深い感情的な反応を引き起こすことを意図される。
42)その他のコンテクストとしてはグレゴリオ聖歌、公的・外交的な演説、政治的レトリックや毒舌、屈託のない童謡やナンセンス詩、さらには医学テクストなどもある。
43)ポーランドの美学史家ヴワディスワフ・タタルキェヴィチ(en:W〇(l+')adys〇(l+')aw Tatarkiewicz)は論文「詩の概念」において、事実上「詩の2つの概念」であるところのものの進化を追跡している。
44)タタルキェヴィチは「詩」という言葉が2つの別個なものに適用されており、この両者は、詩人ポール・ヴァレリーが観察したように、「ある地点で結合する。詩は・・・・・・言語に基づく芸術である。
   しかし詩にはまたより広い意味もあり・・・・・・それは明確なものではないので定義が困難である。詩はある種の『精神の状態』を表現する」のだと指摘している。

45)要素
46)韻律論:
47)韻律論(en:Prosody)は詩のメーター、リズム、イントネーションの研究である。
48)リズムとメーターは密接に関係し合うものであり、日本語ではどちらも「韻律」と訳されることがあるが、別の概念である。
49)メーターは韻文の確立されたパターン(例えば弱強五歩格など)であるのに対し、リズムは詩行から実際に結果として得られた音である。
50)従って、詩行のメーターは「イアンボス(強弱格)」であるといったように記述されうるが、言語がどこで休止または加速を引き起こすか、いかにメーターが言語の他の要素と相互作用するかといったリズムの完全な記述にはこれといった規定はない。
51)韻律論はまたより特定的に、メーターを示すために詩行を解析することを指す場合もある。
このリズムとメーターは後述されています。

52)リズム:
53)詩的リズムを作り出すのに用いられる方法は言語や詩の伝統によってさまざまである。
54)言語は、どのようにしてリズムが確立されるかによって、アクセント(強勢アクセント)、音節、モーラのいずれかに主によるタイミング(en:isochrony)のセットを持つとしてしばしば記述されるが、それ以外にも複数の方面からの影響を受ける。
55)日本語はモーラ・タイミングの言語である。
モーラとは拍の事で、リズムの最も基本的な単位、だそうです。日本語の文字は例外は有りますが、1文字1拍で話されます。
56)音節タイミングの言語にはラテン語、カタルーニャ語、フランス語、レオン語、ガリシア語、スペイン語などがある。
57)英語とロシア語はアクセント・タイミングの言語である。ドイツ語も概ねアクセント・タイミングに含まれる。
58)さまざまなイントネーションもリズムがどう感受されるかに影響する。
59)また高低アクセント(ヴェーダ語や古代ギリシア語など)や声調などに依存する場合もある。
60)声調言語には中国語、ベトナム語、リトアニア語、およびニジェール・コンゴ語族の大半の言語が含まれる。

61)メーターによるリズムは一般的に、各行の中で強勢や音節を韻脚と呼ばれるパターンの反復に正確に配置することを意味する。
62)近代の英詩では強勢のパターンが主に韻脚に違いを付けるので、メーターによるリズムは専ら強勢・非強勢の音節(単独、またはエリジオンして)のパターンによって確立される。
62)一方、古典語では、メーターの単位は同様であるが、強勢よりもむしろ母音の長短がメーターを定義していた。
63)古英語の詩は、各行で音節数は不定であるが強勢の数は一定というメーターのパターンを用いていた。

64)詩篇の内の多くも含む古代ヘブライ語の聖書の詩での主要な道具は、連続する詩行が文法構造、音声構造、概念的内容、もしくはその全てにおいて互いを反映し合う修辞構造であるパラレリズムであった。
65)パラレリズムはアンティフォナやコールアンドレスポンスといった実演に適しており、イントネーションによってさらに強化されうるものであった。
66)従って、聖書の詩はメーターによる韻脚にはあまり頼らず、行・フレーズ・センテンスといったより大きな音の単位に基いてリズムを作り出していた。
67)古典的な詩の形式の中には、タミル語のヴェンパ(ヴェン調、en:Venpa)のように、(文脈自由文法として表せるほどまでに)厳密な文法を持ちそれがリズムを確保していたものもあった。
68)漢詩では、強勢と並んで声調がリズムを作り出す。中国の古典詩は四声を区別していた。平声、上声、去声、入声である。
69)他の分類法では中国語で最大8つ、ベトナム語で6つの声があることもある。

70)近代の西洋詩でリズムを作り出すのに使われる正式なメーターのパターンは、現代では最早支配的なものではない。
71)自由詩の場合、リズムはしばしば規則的なメーターよりもより緩やかなケイデンスの単位に基いて構成される。
72)ロビンソン・ジェファーズ、マリアン・ムーア、ウィリアム・カルロス・ウィリアムズは英詩に規則的な強勢メーターが不可欠だという考え方を拒絶した代表的な詩人である。
73)ジェファーズは強勢によるリズムに代わる選択肢としてスプラング・リズムを実験した。
説明が不充分ですが、ご容赦下さい。

74)メーター:→詳細は「韻律(韻文)」を参照
75)西洋詩の伝統では、メーターは特徴となる韻脚と、行あたりの脚数によって分類されるのが通例である。
76)「弱強五歩格」は1行につき5つの韻脚から成り、支配的な韻脚は「イアンボス」(弱強格/短長格)である。
77)このメーター方式は古代ギリシア詩に起源を持ち、ピンダロスやサッポーといった詩人たちやアテネの偉大な悲劇作家たちに使われた。
78)同様に、「強弱弱六歩格」(長短短六歩格)は1行につき6つの韻脚から成り、支配的な韻脚は「ダクテュロス」(長短短格/強弱弱格)である。
79)長短短六歩格はギリシア叙事詩の伝統的なメーターであり、ホメロスとヘーシオドスの作品が現存する最古の例である。
80)後世では、弱強五歩格はウィリアム・シェイクスピア、強弱弱六歩格はヘンリー・ワズワース・ロングフェローによって用いられている。

81)メーターはしばしば韻脚の詩行への配列に基いて解析される。
82)英語では、各々の韻脚には強勢を持つ音節1つと強勢を持たない1−2つの音節が含まれる。
83)他の言語では、音節数や母音の長さの組み合わせが韻脚の解析方法を決定する場合もある。
84)この場合、長母音を持つ1つの音節は短母音を持つ2つの音節と等価として扱われる。
85)例えば、古代ギリシア詩では、メーターは強勢ではなく音節の長さのみに基いていた。
86)英語などの一部の言語では、強勢のある音節は概してより大きな声で、より長く、より高いピッチで発音され、詩のメーターの基盤となる。
つまりは日本語とは、話される調子が異なる訳です。
87)古代ギリシアでは、これらの属性はそれぞれ独立したものであった。
88)長母音と、母音と2つ以上の子音を持つ音節は実際に凡そ短母音の2倍の長さを持っていたが、ピッチや強勢(アクセントによって決定される)は長さには関係しておらず、メーター上の役割も持っていなかった。
89)従って、長短短六歩格の詩行は6つの小節を持つ音楽のフレーズのように考えることができ、それぞれには二分音符が1つと四分音符が2つ(1つの長い音節と2つの短い音節)もしくは二分音符が2つ(2つの長い音節)含まれていた。
90)2つの短い音節を1つの長い音節に置き換えても同じ長さの韻脚が得られるわけである。
91)このような置き換えは、英語などのような強勢言語では、同じリズムの規則性はもたらさない。
92)アングロ・サクソン族の(頭韻詩の)メーターでは、詩行を構成する要素は韻脚ではなく2つの強勢を含む半行であった。
93)メーターの解析はしばしば韻文の根底にある基礎的・根本的なパターンを明らかにするが、強勢、ピッチ、音節長などのさまざまな違いについては明らかにしない。

94)メーターの定義の例として、英語での弱強五歩格では、各行は5つの韻脚から成り、各韻脚はイアンボス(強勢のない音節に強勢のある音節が続く)である。
95)個々の行を調べる際には、メーターの基本パターンの上にバリエーションがある場合もある。
96)例えば、英詩の弱強五歩格では最初の韻脚は頻繁に倒置されており、強勢が最初の音節に来ている。
97)最もよく使われる韻脚の種類の一般的な名称は:
   ・イアンボス(iamb, 弱強格/短長格)
   ・トロカイオス(trochee, 強弱格/長短格)
   ・ダクテュロス(dactyl, 強弱弱格/長短短格)
   ・アナパイストス(anapest, 弱弱強格/短短長格)
   ・スポンデイオス(spondee, 強強格/長長格)
   ・ピュリキオス(pyrrhic, 弱弱格/短短格)−稀。通常、強弱弱六歩格の終端に用いられる。
  詩行中の韻脚の数はギリシア語の用語を用いて次のように表される:
   ・二歩格(dimeter)
   ・三歩格(trimeter)
   ・四歩格(tetrameter)
   ・五歩格(pentameter)
   ・六歩格(hexameter)
   ・七歩格(heptameter)
   ・八歩格(octameter)
98)これらの他の韻脚のタイプにも広範に名前が存在しており、コリアンブ(choriamb, 強弱弱強格/長短短長格)のような4音節のものまで存在する。
99)コリアンブは古代ギリシア・ローマの詩に由来している。
100)トルコ語やヴェーダ語などのように、メーターの決定に強勢よりも(もしくは強勢に加えて)母音の長さやイントネーションを用いる言語でも、長音と短音の一般的な組み合わせを記述するイアンボスやダクテュロスと類似した概念が
    存在することが多い。

101)韻脚のそれぞれタイプには、それ単独で、もしくは他の韻脚との組み合わせによってある種の「感覚」が伴う。
102)例えば、弱強格は英語で最も自然なリズム形式であり、総じて繊細だが安定した韻文を形作る。他方、強弱弱格はほとんど駆け足で進むような感じを与える。
103)『クリスマスのまえのばん』や『ドクター・スース』に見られるように、弱弱強格は快活でコミックな感じを作り出していると言われる。

104)メーターを記述する上で、異なった「韻脚」の多重性がどれほど有用なものであるかについては議論がある。
105)例えばロバート・ピンスキーは、ダクテュロス(長短短格)は古典詩では重要であったが、英語のダクテュロス(強弱弱格)詩は強弱弱格を極めて不規則にしか用いておらず、ピンスキーによれば英語にとってより自然であるところの
    弱強格と弱弱強格のパターンに基いた方がより良く記述できると論じている。
106)実際のリズムは先述のような解析されたメーターよりもずっと複雑なものであり、多くの学者がこの複雑性を分析できる体系を開拓しようと努力してきた。
107)ウラジーミル・ナボコフは、詩行における強勢・非強勢の音節の規則的なパターンには話し言葉の自然なピッチから生まれるアクセントの別のパターンが重ね合わされていると指摘し、
    アクセントのない強勢をアクセントのある強勢から区別するために "scud" という用語を用いることを提言した。

108)メーターのパターン:
「詩」ページの右側には、英詩の強弱八歩格例と、仏詩のアレクサンドラン例の、サンプリング音源が付随しています。興味の有る方は視聴して下さい。
109)シェイクスピアの弱強五歩格やホメロスの長短短六歩格から多くの童謡で用いられている弱弱強四歩格まで、異なった詩の伝統やジャンルでは異なったメーターが用いられる傾向にある。
110)しかしながら、特定の韻脚や詩行を強調したり単調な反復を回避したりするために、確立されたメーターから変化させることもまた一般的である。
111)例えば、韻脚内で強勢が倒置されたり、カエスーラ(休止)が(時として韻脚や強勢の代わりに)置かれたり、行の最後の韻脚に和らげる目的で女性行末が置かれたり強調し急止を作り出す目的で強強格が置かれたりする。
そしてこれらは、詩の朗読者の個性なのでしょう。
112)弱強五歩格のような一部のパターンは極めて規則的になりやすい一方で、強弱弱六歩格のような一部のパターンは極めて不規則になりやすい。
113)規則性は言語によっても幅がある。加えて、異なった言語ではしばしば異なったパターンが発達し、たとえばロシア語の弱強四歩格は大抵メーターの補強のためにアクセント使用の規則性を反映するが、
    これは英語では行われないか行われても稀である。

114)一般的なメーターのパターンの例を、それを用いた代表的な詩人や詩作品の例と共に以下に挙げる:
    ・弱強五歩格−ジョン・ミルトン『失楽園』     ・長短短六歩格−ホメロス『イーリアス』、ウェルギリウス『アエネーイス』、オウィディウス『変身物語』
    ・弱強四歩格−アンドリュー・マーヴェル『はにかむ恋人へ』、アレクサンドル・プーシキン『エヴゲーニイ・オネーギン』
    ・強弱八歩格−エドガー・アラン・ポー『大鴉』
    ・弱弱強四歩格−ルイス・キャロル『スナーク狩り』、ジョージ・ゴードン・バイロン『ドン・ファン』
    ・アレクサンドラン - ジャン・ラシーヌ『フェードル』
115)漢詩における五言や七言、日本の五七調や七五調もここに加えうるであろう。漢詩には声調に「平仄」と呼ばれる規則がある。
韻に疎い日本人としては、余り関心は持てません。韻を踏む事で詩は確かに耳障りが良く成りますが、歌ではなく詩の進化に関しては枝葉末節だと思います。席亭は詩に関しては、日本の作品の方に軍配を挙げたい。(作者も多いですし。)
席亭は講談や落語の様に、口伝の芸術には覚えやすい調子、リズムが必要だと思います。ですから「韻を踏む」事も、このリズムに通じていると思います。

116)脚韻、頭韻、類韻:→詳細は「押韻」、「頭韻法」、および「類韻」を参照
117)脚韻、頭韻、類韻、子音韻は音声の反復するパターンを作り出す方法である。これらは詩の独立した構造要素として、リズムパターンを補強するために、あるいはまた装飾的な要素として使用されうる。
118)押韻とは、詩行の末尾(脚韻)もしくはその他の予測可能な位置(中間韻)に同一(hard-rhyme)もしくは類似(soft-rhyme)の音を置くことである。
119)言語によって押韻構造の豊かさには差がある。
120)例えばイタリア語は豊かな押韻構造を持ち、長大な詩を少数の脚韻の組で持続させることができる。この豊かさは規則的な形の語尾によるものである。
121)英語は他言語から借用された不規則な語尾が多いので押韻にはあまり富んでいない。
122)押韻構造の豊かさはその言語でどのような詩の形式が一般的に用いられるかを決定する上で重要な役割を担う。

123)頭韻と類韻は初期のゲルマン語、ノルド語、古英語の詩を構成する上で重要な役割を果たした。
124)初期ゲルマン詩の頭韻パターンはその構造の主要部分としてメーターと頭韻を織り交ぜることで、メーターのパターンによっていつ聞き手が頭韻が来ると期待するかを決定できるようにした。
125)これは、近代ヨーロッパ詩の大部分で見られる、規則的ではなかったり、連の全体で完遂はされなかったりする装飾的な頭韻の使用と対比することができるであろう。
126)頭韻は押韻構造に富まない言語で特に有用である。
127)類韻は語頭や語尾での似た音声ではなく語中の似た母音を用いるものであり、スカルド詩で広く用いられたが、これはホメロスの時代にまで遡る。
128)英語では動詞が多くのピッチを持つため、類韻が漢詩の声調要素を緩やかに喚起させることができるので漢詩の翻訳に有用である。
129)子音韻は1つの子音をセンテンスの至る所で(語頭だけではなく)反復するものである。子音韻は頭韻と比して微弱な効果しか引き起こさないので、構造的な要素としての有用性も低い。

130)『英詩への言語学的ガイド』(Longmans, 1969) においてジェフリー・リーチは韻を6つの音声パターンに分類した。
131)これらは、関係する単語を構成する部分のうち1つまたは2つが変化しうる6つの可能な方法として定義されている。
132)下表では不変の部分は大文字/太字で表示している。Cは子音群(1つの子音とは限らない)を、Vは母音を現す。
表には頭韻、類韻(母音韻)、子音韻、逆韻(Reverse Rhyme)、en:Parahyme、脚韻の例が掲載されていますが、省略します。

133)共通する音素が多い押韻は「豊か」であると言われる(言語の押韻構造の豊かさとは別の概念)。
134)例えばフランス語のagate/fr〇(e+')gateは末尾の3音素が共通なので豊かであり、bijou/clou は母音1音素のみ共通なので貧しい。
135)aigre/tigreは子音2音素が共通であるが、このように母音が共通しないものは子音韻であり脚韻とは見做されない。
以下は省略します。

136)ジャンル:
137)個々の形式に加え、詩はさまざまなジャンルやサブジャンルによって捉えられることも多い。
138)詩のジャンルは概して、主題、スタイル、その他のより広範な文学的特徴に基づく詩の伝統もしくは分類である。
139)ジャンルを文学の自然な形式であると見做す批評家もいる。またジャンルを、異なった作品がいかに他の作品と関連し言及するかの研究であると見做す批評家もいる。
140)叙事詩は広く認められるジャンルの1つであり、その時代の文化にとって英雄的もしくは重要な性質の出来事に関する長大な詩としてしばしば定義される。抒情詩も広く認められるジャンルであり、短く、美しい調子を持ち、観照的な傾向を持つ。
141)批評家によってはより細かいサブジャンルへと詩を分類し、個々の詩は数多くの異なったジャンルに同時に属すると見做されもする。
142)多くの場合、共通する伝統の結果として、詩のジャンルは文化を超えて同じ特性を見せる。

143)以下に一般的なジャンルをいくつか記述するが、ジャンルの分類、その特質の記述、そして詩をジャンルに分類しようとする理由そのものすらもさまざまな形を取りうる。
144)物語詩:→詳細は「物語詩」を参照
145)物語詩は物語を語る詩のジャンルである。広義には叙事詩も物語詩に含まれるが、「物語詩」という用語はより小さな、概してより人間的興味に訴えるような作品に用いられることが多い。
146)物語詩は最も古い詩の種類であったかもしれない。
147)多くのホメロス研究者は、『イーリアス』と『オデュッセイア』が一晩の娯楽により適している個別のエピソードに関する短い物語詩の編集(コンピレーション)により構成されたものであると結論している。
148)多くの物語詩――スコットランド人やイングランド人のバラッドやスラヴ人の英雄詩など――は文字使用以前の口承に起源を持つ実演詩(en:performance poetry)である。
149)メーター、頭韻法、ケニングなどの詩を散文と区別する要素のいくつかはかつて伝統的な物語を暗唱する吟遊詩人たちの記憶術として機能していたのではないかと推測されている。
確かに、物語に節が付いていれば、記憶も簡単になるものと思われます。講談や演歌などでもそうですよね?
150)主要な物語詩人としては、オウィディウス、ダンテ・アリギエーリ、ファン・ルイス、ジェフリー・チョーサー、ウィリアム・ラングランド、ルイス・デ・カモンイス、ウィリアム・シェイクスピア、アレキサンダー・ポープ、ロバート・バーンズ、
    フェルナンド・デ・ロハス、アダム・ミツキェヴィチ、アレクサンドル・プーシキン、エドガー・アラン・ポー、アルフレッド・テニスンなどがいる。

151)叙事詩:→詳細は「叙事詩」を参照
152)叙事詩は詩のジャンルの1つであり、また物語文学の主要な形式の1つでもある。
153)叙事詩は持続的な語りにより英雄的もしくは神話的な人物(たち)の生涯と業績を物語る。
154)叙事詩の例として、ホメロスの『イーリアス』と『オデュッセイア』、ウェルギリウス『アエネーイス』、『ローランの歌』、『ニーベルンゲンの歌』、ルイス・デ・カモンイス『ウズ・ルジアダス』、『わがシッドの歌』、
    『ギルガメシュ叙事詩』、『マハーバーラタ』、ヴァルミキ(en:Valmiki)『ラーマーヤナ』、フェルドウスィー『シャー・ナーメ』、ニザーミー『ハムセ』(「五部作」)、チベットの叙事詩『リン・ケサル大王伝』、アイヌのユーカラなどがある。
155)西洋では20世紀初頭以降は叙事詩や長詩全般があまり書かれなくなったが、それでも若干の重要な叙事詩は書かれ続けている。
156)デレック・ウォルコットはその叙事詩『オメロス』に主によりノーベル文学賞を受賞した。

157)劇詩:→詳細は「劇詩」、「ギリシア悲劇」、「戯曲(中国)」、および「能」を参照
158)劇詩は語りもしくは歌われるよう書かれた韻文の演劇である。多くの文化にさまざまな、また場合によっては類似した形式で存在する。
159)韻文劇はサンスクリットやギリシアの叙事詩のような初期の口誦叙事詩から発達したものであるかもしれない。
160)韻文によるギリシア悲劇は紀元前6世紀に遡り、サンスクリット劇の発達に影響を与えた可能性がある。
161)同様にインドの演劇は中国の戯曲の先触れとなった「変文」(zh:〇文)の韻文劇の発達に影響を与えた可能性がある。東アジアの韻文劇には日本の能(謡曲)もある。

162)ペルシア文学の劇詩には、ニザーミーの著名な劇作品『ライラとマジュヌーン』『ホスローとシーリーン』、フェルドウスィーの『ロスタムとソラブ』などの悲劇、ジャラール・ウッディーン・ルーミーの『マスナヴィー』、
    アサド・グルガニーの悲劇『ヴィスとラミン』、Vahshi Bafqiの悲劇『Farhad』などがある。
163)西洋では伝統的に悲劇と喜劇を二大分野としてきた。韻文による悲劇ではギリシア悲劇の三大悲劇詩人(アイスキュロス、ソポクレス、エウリピデス)、後世のシェイクスピア、ジャン・ラシーヌなどがいる。
164)喜劇ではアリストパネスやモリエールなどが代表的であるが、「喜劇」は必ずしも滑稽さを前提とはせず、ダンテの『神曲』(La Divina Commedia) なども分類上は喜劇となる。
165)ゲーテ『ファウスト』のようにどちらにも分類されない劇詩も多い。
166)今日では戯曲が韻文で書かれることは稀である。
以下は、分類セクションだけご紹介します。§風刺詩、§抒情詩、§エレジー、§寓話詩、§散文詩。
そして、お待たせしました。次のページは時代がギリシアからローマに移る、「帝政」ページです。

→帝政